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自然循環栽培の生産地の一つ宮城県田尻町で、放牧養豚を営む高橋精一さんを訪ねました。

「イヨー久しぶり!」高橋さんは大きな体をゆったり運びながらやってきた。「彼は得た収入を全部使ってあの辺りの丘陵地帯を買い続けているのさ」と「自然循環栽培のお米」生産者の小野寺實彦さんが言っていたが、少しずつ広げていった牧場の面積は現在10ha(100,000平方メートル)にもなるらしい。

高橋さんの牧場は、田尻町の丘陵地帯にあって、見渡す限り視界をさえぎるものはなく、広々とした田園風景が心をゆったりした気分にさせてくれる。遥か向こうに栗駒岳が美しい。高橋さんは牧場の柵内にいて、その足元には豚たちがブイブイ何頭も群がっている。

彼が「オーイ」と声をかけると、向こうの木立からまた何頭もの豚たちがドドドーッと地鳴り立てて一目散に高橋さんを目掛けて走ってくる。こんな豚の風景など見たことがない。

「普通の豚の生活というのは刑務所のようなもので、狭い場所にギュウギュウ詰めにされて、匂いが臭く、動けないので糞だらけなんです。一般的に豚はストレスがかからない動物だと言われてきましたが、私はそんなことは絶対にないと信じています。」

 
 
 
   

ハム作りは昭和54年から始めて、地元だけに細々と販売していたという。

「ハム作りを思い立ったのは、まずは自分の食べたいハムが無かったから。それと親父の影響なんですよ。親父は大正10年生まれで、地元の小牛田農林高校の出身。ここでは農家の後継者づくりが方針で、ハム・チーズ・バターなんかの作り方まで教えていた。親父は農業をやると豊かになるというのが口癖で、だから最初は親父の言葉通り自分の生活を豊かにするために始めたんです。農家は最低食べることだけはできますからね(笑)」

高橋さんの話す足元では次々と豚がやってきて高橋さんの足を噛んだり舐めたり、足元の地面の土を食べたりしている。それにしても日本でこんなに1頭あたりの土地面積を確保している豚はあるのだろうか?

「豚は土を食べ、草を食べる動物なんです。だから、豚の習性を生かすために豚を放牧したんです。そうすると豚はストレスがかからず幸せに一生を過ごせるのではないかと思ったんです。私は彼らの本来の習性を大切にしてあげたかったんです」

だからぶたの放牧場は3ヶ月ごとに交代している。放牧場をゆったりと体を揺すりながら豚たちと歩いて行く姿を見て、高橋さんは根っから動物が好きなんだろうなと、思わずにはいられなかった。この豚たちは大体90日で成長し、さらにそこから90日放牧してから屠殺場に行くという。

 
 
 
   

高橋さんはこんなことも言っていた。

「この豚を食べるなら丸ごと全部食べてほしいんです。どの部位も無駄にしたくない。それが成仏するということですよ。加工するとね、1頭からハム・ソーセージの種類としてね、およそ、ロース・ベーコン・ボンレス・ポーク・ショルダー・ウィンナー・サラミ・ボローニャといったものができる。お客様から『ロースハムだけ頂戴』と言われても困るんですよ。すこしも無駄にしたくない。だから限定販売にしてほしいんです。

品種はランドレースとバークシャー(黒豚)の掛け合わせで、特徴はランドレースは脂が旨く、バークシャーは赤身が旨いんです。うちの豚は土を食べてますから、土着の微生物を食べているんです。だから獣臭が少なく、すっきりした味になります。さらに、無添加ですから安心ですよ。」

と高橋さん。

「私の夢は、お客様に自分の放牧場に来てもらって、自分の作った安全なハムやソーセージなどを試食してもらえる場所を提供したいんですよ。」

そういうと、高橋さんはまた豚たちと遊びだした。