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「すごい蜂蜜」があると聞いて、大阪から自動車で3時間、京都府宮津市。待ち合わせ場所で出迎えてくださったのは、河野正明さんと豊子さん夫婦とお孫さん。蜂蜜の巣箱を見せていただきたいという要望に快く応じていただき、天橋立や舟屋で有名な井根町の町並みを丹後半島の海岸線に沿って車で移動しました。

突然、眼下に断崖絶壁の斜面を覗く海岸線で車が止まりました。一体何が起こったのか分かりません。車から降りた河野さんは、何も言わずに海岸線に面する道路のガードレールをまたぎ、自分も付いてくるように手招きし、がけを降りていきました。

自分も遅れをとらないように必死に付いて行こうとしましたが、行く手を妨ぐ木々の為になかなか前へ進めません。トゲのある木やウルシなどに触れないように慎重に進んでいきました。ぬかるんだ地面は滑りやすいので、足を踏み外すと、そのまま十数メートルも下の海に転落してしまいます。

「自然任せの天然採種の蜂蜜とは、こんなに厳しいものなのか!思っていたものとは違うぞ!」頭の中は、かなり混乱していました。

 
 
 
   

しばらく崖づたいに歩を進めていくと、岩場の影に隠れるように木製の木箱。木箱の細い隙間から、ミツバチが盛んに出入りしていました。

河野さんが、釘で固定している巣箱をくぎ抜きで開けていくと、とたんに、ミツバチが騒がしく動き出しました。自分もひるまずに、用意していた網を頭に被り、巣箱に接近。刺されはしないだろうかと、内心はヒヤヒヤ。

「もし、1匹でも殺してしまうとたちまち仲間に危険信号が伝わり、命がけで向かってくる」と河野さん。日本ミツバチは、針と内臓がつながっており、針で刺すと内臓も一緒に取れミツバチも生命を落とすので、よほど危機を感じたときに、まさに捨て身でかかって来ます。

河野さんは慣れたもので、手際よく巣箱からハケでミツバチをどかしていきます。巣箱の中には、5〜6の塊が連なった大きなハチの巣があり、中には蜜がいっぱいに詰まっていました。

 
 
   

巣を守ろうと、ミツバチの動きはさらに激しくなってきましたが、河野さんは構わず手で少しづつ巣をはずして籠の中にいれていきました。割れた蜂の巣からは、黄色く輝くハチミツが滴り落ちます。

思わず「おいしそー」、と叫んでしまいました。ミツバチは盛んに威嚇していたものの、結局私たちを刺すことはありませんでした。河野さんがむやみにミツバチを興奮させなかったからです。

そんな河野さんも、

「仕掛けの見回りのときにバッタリと熊に出会ったときは身動きできなかった。まー、熊も自然のものだから仕方がないけどね」といいます。

熊も大好物だから、「クマさんの蜂蜜」。

こんなところから、この蜂蜜は命名されたのです。

 
 
   

河野さんは、今も林業が本職。蜂蜜採種は、おじいさんに教えられたというからずいぶんとキャリアは長い。

その河野さんでも、これなら大丈夫という方法が分かったのは、14〜15年前。それまでは、蜜を採ってはミツバチを逃していたが、今はハチミツをとっても逃がさなくなったそうです。

ミツバチの行動範囲は、約2km。時間にして、2〜3時間。巣箱をただ置いただけではミツバチは寄って来ません。

岩の裂け目や「うと」と呼ばれる木の穴に棲む自然蜂を自家製の木の箱に移して蜂蜜を採取します。

2kmの間にどれだけ花があるか。

山にどんな花があるかが重要で、草木の状況を見て、巣箱をどこに置くか決めるといいます。

それを見極める目を養わなければ河野さんのような養蜂はできないようです。

 
 
   

蜂蜜は、ミツバチが幼虫を育てたり、冬を乗り切るための保存食とするために、花から集めた蜜を巣にためたものです。ミツバチは、花の蜜に酵素を混ぜ、ショチ糖をブドウ糖と果糖に分解します。

その8割が糖分で、残りが水と花粉とミネラルなどからなります。味や香りや色の違いは、ミツバチが集めてきた花粉の違いによります。西洋ミツバチは、1箇所の花に集中して蜜を集める性質で、特定の花から多量の蜂蜜が取れます。また、1年に何度もとれます。

一方、日本ミツバチは、自分達の生活に必要な分しか集めないため、生産量も多くありません。しかし、2年に1回だからこそ、いろいろな種類の花粉が集まり、その分含まれる成分も多くなります。また、多くの蜂蜜では、レンゲならレンゲだけというように、含まれる蜜の種類は少ないのが一般的ですが、このミツバチは丹後半島一体に自生する様々な草花から採種したハチミツです。

「百花蜜」といわれるように、ニホンミツバチの蜂蜜は、さまざまな花の蜜が混ざっているから、それだけいろいろな栄養分が含まれ、奥深い味わいになります。またもちろん、河野さんの蜂蜜も日本ミツバチの天然物。

とろけ落ちる蜂蜜は、甘味がくどすぎない爽やかな味わいで、料理やジュース、パンに塗るなどどんな食べ方にも合います。まずは、スプーンでタップリと蜂蜜をすくい、そのまま食べて、この蜂蜜を口の中いっぱいに味わってください。